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おほりばたさんだい

御堀端三題

岡本 綺堂

柳のかげ「文藝春秋」1937(昭和12)年8月、怪談「モダン日本」1936(昭和11)年9月、三宅坂「文藝春秋」1935(昭和10)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,863 字 · 12 页

青空文庫

わたしは女を怪むよりも、自分を怪まなければならない事になった。

それを友達に話すと、君は精神病者になるなぞと嚇された。しかもそんな例は後にも先にもただ一度で、爾来四十余年、幸いに蘆原将軍の部下にも編入されずにいる。

三 三宅坂

次は怪談でなく、一種の遭難談である。読者にはあまり面白くないかも知れない。

話はかなりに遠い昔、明治三十年五月一日、私が二十六歳の初夏の出来事である。その日の午前九時ごろ、私は人力車に乗って、半蔵門外の堀端を通った。去年の秋、京橋に住む知人の家に男の児が生まれて、この五月は初の節句であるというので、私は祝物の人形をとどけに行くのであった。私は金太郎の人形と飾り馬との二箱を風呂敷につつんで抱えていた。

わたしの車の前を一台の車が走って行く。それには陸軍の軍医が乗っていた。今日の人はあまり気の附かないことであるが、人力車の多い時代には、客を乗せた車夫がとかくに自分の前をゆく車のあとに附いて走る習慣があった。前の車のあとに附いてゆけば、前方の危険を避ける心配がないからである。しかもそれがために、かえって危険を招く虞れがある。