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こころのアンテナ

心のアンテナ

佐々木 邦

「現代」大日本雄辯會講談社、1937(昭和12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,973 字 · 27 页

青空文庫

理窟は知っている。職業に貴賤のある筈はない。同じことでもお母さんの説明は気休めのように聞えたが、新人をもって任じる銀さんの主張には論証的の強みがあったのである。

「もう時代が違います。太夫も三味線弾きも芸術家です。芸人じゃありません」

「分ったわ。私、明日鶴田さんと芹沢さんに言って上げますわ」

「流石は美代子さんです」

「厭よ、煽てちゃ」

「ハッハヽヽ」

「芸人って言葉、私、本当に面白くないわ」

「僕は誤解のないように、芸術家で行きます。三味線は器楽、義太夫は声楽です。声楽家の積りですから、遠慮しないで、鶏が締め殺されるような声を出します」

「弁解ね。オホヽヽヽ」

「頭の好い人には敵いません。ハッハヽヽ」

と銀さん、ナカ/\曲者だ。

その晩、奥さんは師匠が同業の寄合から帰って来ると直ぐ、

「あなた、しっかりして下さらないと困りますよ」

と訴えた。これがいつも問題の前提だ。

「何だい?」

「家の教育が届き兼ねます」

奥さんは美代子さんが芸人の子だという理由で侮られた経緯を話した。銀二郎君の主張に感心したと見えて、それも附け足した。しかし師匠は一向驚かない。

「それはお蔦、お前が威張り過ぎる。