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こころのめ
心の芽
小川 未明
「少国民の友 22巻11号」1946(昭和21)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,922 字 · 10 页
」
「親方、私たちは、いままで、自分というものをよく考えなかったんですね。」
「それだから、気力も、勇気もなかったのだ。」
「金とか、学問とかいうことより、なによりみんなが正しい考えをもつ人間となることが大切なんですね。」
「それが民主主義なんだよ。」
こうして、正吉は、前の主人から、勇気づけられて帰りました。それから、ひまがあれば、選挙候補者の演説を聞き歩くことにしました。選ぶには、まず、その人を知らなければならぬからです。まだ世の中のほこりに汚されぬ若者の感覚は、何人が心にもないうそをいったり、あるいは、飾らず真実を語るか、また謙遜であって、信用するに足りるか、どうかということを、目で見わけ、耳で聞きわけたのでした。そして、ごまかしの誘惑や、一時の宣伝にとりことなるのを警戒し、自己の信ずる人に投票しようとしたのであります。
そうするうちに、いよいよ選挙日となりました。おりしも、春のいい季節であって、正吉らの投票場は、近くの小学校にきめられました。彼は、午前のうちに出かけ、多くの人たちとともに、列をつくって並んだが、その長い列は、えんえんとして、さながら長蛇のごとく、運動場の内側を幾巡りもしたのであります。