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こころのしらべ

心の調べ

宮城 道雄

宮城道雄『心の調べ』。同一底本的分册已合并为一书。收入:心の調べ、雨夜の駅、音の世界に生きる、垣隣り、声と食物、声と性格、声と人柄、五十年をかえりみて、純粋の声、春雨、耳の日記、昔の盲人と外国の盲人、山の声、私のすきな人、私の若い頃、レコード夜話。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,958 字 · 66 页

青空文庫

越えて八月の六日には庭でこおろぎがなきはじめた。また同じ月の十三日には関東ではあまり聞かぬ蝉がないた。この蝉は関西にはよくいてセビセビセビセビと続けてなくのである。私は葉山では毎年聞くが、それも一匹位で日にひとしきり、ふたしきり程なくだけで二日もたつともう声が聞こえなくなる。

八月も半ばを過ぎると浜辺に打ち寄せる波の音も秋の訪れを思わせるように私には感じられる。虫の音も次第に数を増してくる。夜になると私の床にひとしお床しく聞こえるのはこおろぎ、馬追い、鉦叩き、くさひばり、えんまこおろぎ、またその中を縫うように名も知らぬ虫の声が聞こえてくる。くさひばりは昼間も静かにないている。こおろぎは昼間はゆっくり羽を動かして忍びなきしているように聞こえる。今年の秋は蝉ではオーシーツクが一番あとまで聞こえた。何といってもこおろぎは秋の初めから終りまで鳴き過す。少し寒く感じる日には家の中へはいってきて鳴く。私はその声を聞くと一層かわいらしく思うのである。今はもう秋も末になってこおろぎの声も絶えだえである。風もなく天気のよい午後の空を破るような声を立てて百舌が飛んでいる。