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しんぞうとうなん

心臓盗難

海野 十三

烏啼天駆シリーズ・2

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,434 字 · 21 页

青空文庫

とんでもないことだ、そんなことは安東に話してやれないな”

「ねえ先生、なんとかして頂けません、あたしの一番大切な人のために……」

いつ現われたのか、今福西枝が彼猫々の前に現われての歎願であったのであった。

「なるほど。では何とか努力してみましょう」

と、袋探偵はうっかり約束をしてしまって、後で大いに呻った。

約束は約束だ。そこで探偵はその夜一夜まんじりともしないで脳細胞を酷使した揚句、夜の明けるのを待って、稀代の怪賊烏啼天駆の隠家へ乗込んだ。

かれ烏啼天駆は、すっかり気を腐らせたと見え、髪も茫々、髭も茫々、全身熟柿の如くにして長椅子の上に寝そべって夜を徹して酒をあおっていた。袋猫々が入って来たのを愕きもせず、不思議がりもせず、朦朧たる酔眼の色をかえもせず、依然として酒を浴びるように口の中へ送っている。

「おい烏啼君。この問題についちゃ、君は初めからへまばかりやっているよ。実行に先立ち、なぜもっとよく考えなかったんだ。そうすれば、結果が君の希望と反対になるということが分ったはずだ」

「……」

「いいかね、君は君の恋敵の身体からその心を奪って、恋敵の胸に不細工きわまる代用心臓をぶら下げさせた。