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しんれいさつじんじけん
心霊殺人事件
「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页
母は一寸法師が宿の客ひきをして大荷物をブラさげてよたよたしているのを気の毒がっていた唯一の家族だったからである。
しかし、とにかく仙七がビルマの孫をひきとると称し、その所在を知るため長男の霊をよぶと称してはるばる大和から吉田八十松という心霊術師をよびよせることになったのは事実であるから、そもそも彼の真のコンタンは何であるか、兄妹そろって先ずもってこう考えたのは当然であろう。
ところが半年ぐらい前から仙七の様子にいささか変なところがあった。時々陰鬱な顔で放心しているようなことがあったのである。陰鬱なのは今にはじまったことではないが、放心を人に見せるような仙七ではなかった。また時々イライラ、セカセカしているようなことがあった。こういう様子も人に見せた仙七ではなかったのである。
だから仙七の心に何事か変ったものが生じていたに相違ないが、さればとて戦死した長男への愛情ということは考えられない。彼が長男の幽霊を見た、ビルマの孫をひきとりたいと云いだしたのはずッと後のことで、つまり何事か心に変化の生じたあげくに思いついた口実としか考えられないのである。
しかし、四人の兄妹が一様にこの心霊術の実験に反対のわけではなかった。