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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

「ウーン」

諸方で誰かが呻きを発した。二三人にとどまらない。一人の呻きをきくと、ひきずられて思わずうめかずにはいられなかったのである。

怪音が三四十秒つづいて終ると、すでに音楽も終っていた。にわかにハモニカが宙にういてプープー鳴りはじめた。人が吹いているのではない。なぜならハモニカは人の頭よりも高いところをクルクル舞い廻っているからである。突然メガホンも宙を舞いはじめた。つづいてラッパが舞い上った。三ツ一しょに目まぐるしくクルクル舞い狂ったあげく、にわかに三ツ同時にテーブルの上へころがり落ちたのである。

今度は笛が舞い上った。そして物悲しげな笛の音がかすかに宙から起ってきた。しかしそれも人が吹いているのではない。なぜなら笛は木から木へとぶムササビのように右から左へ左から右へ絶え間なくはげしい運動をつづけているからだ。人形が舞い上った。物悲しげな笛の音はなおもかすかに断続している。にわかに二ツが空中高く舞い上って落下した。すでに土ビンと茶ワンが舞い上っている。二ツがカチカチふれあう。はなれる、またふれあう。土ビンが傾いて茶ワンに水をつぎこんでいる。