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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

サヤは死体のかたわらに発見せらる。証拠物件はこの一ツのみ。鑑識の結果、指紋の検出を得ず。

目下の状況に於ては現場に同席せる全員を容疑者と目する以外に有力なる証言を得ず。位置の関係より、辰男、茂手木、糸子に最も可能性ありとするも、他の四名を不可能と断ずる根拠またなし。以上

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翌日曜は一同足どめをくらッたまま何事もなくて、月曜に至って後閑邸へ参集を命じられた。午後六時半には日が暮れるから一時間半くりあげて七時から前々日と同じことを実演してみることになったのである。

各人の後閑邸到着から実演室への着席まで順を追うてやるのだが、ここらへんで便所へ行ッたッけ、お茶が来たッけ、そうだったかなアというアンバイで埒があかない。威勢のよい茂手木はとうとう怒ってしまった。

「オレは勤め人だぜ。熱海へ足どめしてくだらないことをさせて、だいたい警察のやり方がなってやしねえや。最新の科学を利用してテキパキと物的証拠がつかめねえのかやい。銭形平次時代みたいな実演会なぞ今どきやるとは何事だ」

「ま、キミ、我慢して今晩だけつきあってくれたまえ。明日からは自由だから」