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しんれいさつじんじけん

心霊殺人事件

坂口 安吾

「別冊小説新潮 第八巻第一四号(創作二十二人集)」1954(昭和29)年10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,557 字 · 52 页

青空文庫

「ヤイ、帰れえ! みんな帰れえ!」

「お前がでてけえ!」

「ヤイ、糸子!」

「なんだい、ジダンダふんだって一メートルじゃアはえないや。クビをくくるにはカモイが高すぎるし、いい身分だなア」

「ウーム!」

一寸法師は益々真ッ赤になって必死に我慢しているのである。

「ではお先に」

と九太夫は腰をあげて、急いで戻ったのである。

もっとも九太夫は決して不愉快だったわけではない。なんとなく憎みきれない一族だ。むしろ好意を感じた方が強かった。どことなく天真ランマンなのである。ヤケのヤンパチの底をついているにしても。

★

九太夫はねられぬままに犯人は誰かということについて考えてみた。

あの暗闇ではみんなが殺しに行くことができる。そして殺すことができる。しかし奇術師として考えてみても、殺してから元の位置へ誰にもさとられずに、ぶつかったり、さわったりせずに戻ってくることが難物だ。人と人にはさまれた位置の者が特に困難である。奇術師の立場からでも相当に難物だ。ところが電燈がついたとき、一同元の位置にいたのであるから、人と人にはさまれた位置の者、特に九太夫その人の両側は犯人の容疑から取り除いてもよろしいようだ。