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ちゅうぎ

忠義

芥川 竜之介

武士板仓修理被神经衰弱折磨,连畳角都像刀刃刺痛神经。身边无人理解,他还能守住这份忠义吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,171 字 · 27 页

青空文庫

されば、」修理はじっと宇左衛門の顔を見ながら、一句一句、重みを量るように、「その前に、今一度出仕して、西丸の大御所様(吉宗)へ、御目通りがしたい。どうじゃ。十五日に、登城させてはくれまいか。」

宇左衛門は、黙って、眉をひそめた。

「それも、たった一度じゃ。」

「恐れながら、その儀ばかりは。」

「いかぬか。」

二人は、顔を見合せながら、黙った。しんとした部屋の中には、油を吸う燈心の音よりほかに、聞えるものはない。――宇左衛門は、この暫くの間を、一年のように長く感じた。佐渡守へ云い切った手前、それを修理に許しては自分の武士がたたないからである。

「佐渡殿の云われた事は、承知の上での頼みじゃ。」

ほどを経て、修理が云った。

「登城を許せば、その方が、一門衆の不興をうける事も、修理は、よう存じているが、思うて見い。修理は一門衆はもとより、家来にも見離された乱心者じゃ。」

そう云いながら、彼の声は、次第に感動のふるえを帯びて来た。見れば、眼も涙ぐんでいる。

「世の嘲りはうける。家督は人の手に渡す。天道の光さえ、修理にはささぬかと思うような身の上じゃ。その修理が、今生の望にただ一度、出仕したいと云う、それをこばむような宇左衛門ではあるまい。