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かいそう

快走

岡本 かの子

「令女界」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,273 字 · 11 页

青空文庫

陸郎はなかなか帰って来なかった。母親はじりじりして待っていた。そのうちに道子が帰って来てしまった。

「また例の通り長湯ですね。そんなに叮嚀に洗うなら一日置きだってもいいでしょう」

「でもお湯に行くと足がほてって、よく眠れますもの」

兎も角、眠れることは事実だったので、道子は真剣になって言えた。母親は

「明日は日曜でお父様も家においでですから、昼間私と一緒に行きなさい」

と言った。道子は何て親というものはうるさいものだろうと弱って

「なぜそう私の長湯が気になるの。眠る前に行く方がいいけれど、それじゃ明日は昼間行きましょう」

道子は一日ぐらいは我慢しようと諦めた。それが丁度翌日は雨降りになった。道子は降り続く雨を眺めて――この天気、天祐っていうもんかしら…………少くとも私の悲観を慰めて呉れたんだから…………そう思うと何だか可笑しくなって独りくすくす笑った。

お昼過ぎに母親と傘をさして済した顔でお湯に行った。

「そんなに長くお湯につかってるんじゃありませんよ」

母親が呆れて叱ったけれど、道子は自分の長湯を信用させるために顔を真赤にしてまで堪えて、長くお湯につかっていた。