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おもい

思い

伊丹 万作

情報局の映画新体制案について

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,336 字 · 9 页

青空文庫

このような歌曲が行われ、あのような浪花節が喜ばれ、また人の知るような愚劣な歌舞伎、新派、漫才などが横行している、この一般文化の質の低さをこのままにしておいて、映画だけを特別に引き上げるということははたして望み得ることであろうか。

映画を今の純文学のように、あるいはまた能楽のようにして民衆との縁を断ち切つていいなら、どんな高い仕事でもできる。しかし、それでは映画でなくなつてしまう。あのようなラジオを聞き、あのような演芸を喜ぶ人々が、同時に映画の客なのだ。映画も浪花節も同じ一つの社会に咲く花なのである。つまり映画の質を規定するものは、半分はそれを作る人であるが、他の半分はそれを作らせる社会である。したがつて映画を引き上げることの本当の意味は、映画と同時に、その映画をささえている観客一般の文化の質を引き上げることでなければならぬ。

少なくとも、私の見解はそうであるし、一面、今までの映画の歴史はそれを証明してあまりがあると思う。ここにこの問題の大きさと、はかり知れぬ重量があり、選ばれた何人かの人々の相談のみをもつてしては容易に片づけにくい理由があると思う。