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おもいちがい
思い違い
山本 周五郎
「朝日新聞 PR版」1964(昭和39)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,487 字 · 5 页
という説だ。誰が初めにとなえだしたか、どんな実績があったかわからない。何千年も昔の中国にはじまり、現在なお東海の君子国でも信じられ、信奉者の数はかぞえきれないようである。
七十歳を越してから、十五、六歳の処女とベッドを共にして――この場合は厳密にベッドを「共にする」ことが戒律だそうであるが――八十歳すぎてなお壮年者の如く活躍しているか、または「いた人たち」が少なくないことは人のよく知るところである。しかし私は、声を高くしていま叫びたい。
――それはその人の寿命である。
ちょっと考えてみればわかることだ。若い女性は生命力に充ち、あらゆるものを吸収して自分の活力にする。それは意識したものではなく、肉躰の本原的なはたらきであろう。老人は枯れつつある樹のようなもので、活力に充ちた若い女性から、なにかを吸収するような力がある筈はない。逆に若い女性のほうこそ、もし老人に残っているとすれば、その残った活力を吸収するに相違ない。たとえばここに一本の老松があり、隣りに松の若木があるとしよう。両者のどちらがより多く土から水分を吸い、養分を吸いあげるだろうか。――これはあえて物理的に証明することも、生理的方程式を立てる労も不必要なことだ。