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しさくしゃのにっき

思索者の日記

三木 清

「文芸」1939(昭和14)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,681 字 · 4 页

青空文庫

そこに東洋的ヒューマニズムの特色があるといえるであろう。

ソクラテスやキリストの死が悲劇的であるように、いわゆる歴史的意識には悲劇的精神が属している。ヘーゲルやシェリングなどが悲劇的精神を歴史の本質の理解の根本においたということには重要な意義がある。ところが東洋にはそのような悲劇的精神がない。ペシミズムといっても東洋のそれはこの点において西洋のそれと異なっており、したがってまたオプチミズムについても同様であると思う。私はかつて日本人には悲劇的精神がないからナチス流の政治は日本には適しないと書いたことがある。今日支那事変について「東洋の悲劇」などということを述べている日本主義者もあるが、日本主義者が悲劇的精神を説くのは日本主義の変質ではなかろうか。

昨日田中美知太郎君が来てテルトゥリアヌスの本を持っていないかといっていたので今日探してみたが、『教父文庫』の中の独訳があっただけだった。それを取り出して読んでいるうちに夕方になる。田辺耕一郎君が来て農民文学懇話会のことを話していると、渡部義通君来訪、ついで桝田啓三郎君が来る。田辺君ひとり先に帰ってから渡部君と碁を二番打ち、三人で夕食をする。