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きゅうこうじゅうさんじかん
急行十三時間
甲賀 三郎
「新青年」1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,724 字 · 24 页
「で、先生が彼を犯人と定められたのは?」木村が聞いた。
「些細な事からですわい。わしはあんたといろいろ話をして善良な人と推察したので、大方探偵じゃろと思うた。所がこの人はたった一度じゃが、こっちの人に上衣を脱げと勧めたわい。尤も上衣に金が這入っている事は、後に二人まで変装した人間がついているからには何か覗っとるものがあるに違いないと思って、それとなく図星を指して云わした事じゃが、その時にははんこの男は学生の上衣の金を覗っとると思ったのじゃ」坂田博士は少しも得意の色を見せないで云ったが、鳥渡息を継いで聞いた。
「わしに、も一つ分らん事があるが、わしは心理反応を研究する積りで金はスリ替えられていると云う暗示を与えたのだがそれが偶然一致したのに驚いた。金は誰が盗ったのじゃろ」
「さあ、それは私にも分りかねますが」木村が静に答えた。「之は推測に過ぎないのですが、金は恐らく、こちらの方の手に這入った時から偽物だったかと思われます」
「え、え」私は飛上った。
之で急行十三時間事件はお終いである。多分蛇足とのお叱りを受けるかも知れんが申添えて置くのは、金はやはり木村探偵の推察通り、私の受取った時から偽物だった。