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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

二

それと同時に、宿酔に縺れた中田の頭も、今日一日の目茶目茶な行動から、漸く加わって来た寒気と共に、現実的な問題に近寄って来た。

彼は矢張り黙りこくって、今までの成り行きを一生懸命反芻してみたのだが、その記憶は極めて断片的なものでしかなかった。

だが、彼女銀子に関しては、また余りにも鮮明な色彩をもって浮びいづるのだ。銀子の横顔に写る陽射しは儚なき男の血潮であろうか、その接吻に腫れた唇、そしてまだ陽を見たことのないクリーム色の(十二字削)そして彼女の完全な(それは、悲しい、思っただけでも胸の疼くような)離反! 自棄酒。そして自分は今まで、この始めて逢った男の、奇妙な話振りを夢中になって聞いていた……。

然し、何故この男と知り合になったのだろう――そうだ、停車場へ行く道を訊いたのだった――フトその記憶に辿りつくと、中田は思わず足を止めて、改めてあたりを見廻して見た。だが、あたりは依然として、人家さえ視界から取払われた、曠茫とした荒野にとりかこまれていた。それどころか――朝から天候の悪かった所為もあろうが――もうなんとなく薄暗くさえなって来て、荒涼とした廃頽的なこの原が、暗澹たる夜の帷に覆われるのも、もうさして長い時間がかかろうとは思われなかった。