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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

蘭郁二郎『怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像』。同一底本的分册已合并为一书。收入:足の裏、穴、息を止める男、腐った蜉蝣、幻聴、孤独、舌打する、植物人間、蝕眠譜、自殺、鉄路、脳波操縦士、古傷、鱗粉。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,233 字 · 223 页

青空文庫

彼は、ゆるやかに口笛を吹くと、やがて、空中で、いきなりピアノを弾くように両手を踊らせ、あはははは、と笑った。

『信じられぬ……』

私は、反撥的にそう呟いた、しかしその語尾は淡く消えてしまった。

私も亦、彼にとっては敵の一人であったのだ。この背負投げは、事実であるかも知れぬ……。口惜くも私は半信半疑の靄につつまれて来るのであった。――

六

既に、ネネと木島とが東京へ帰ってから、三月が経った。

春日のところへ、ネネが来るのを待っていた訳ではないのだが、あの気まずい別れぎわの春日の揚言と哄笑とが、私の耳の底に凝着き、何とはなくぐずぐずしている中に、もう、明るい陽射しの中を、色鮮やかな赤蜻蛉の群が、ツイツイと庭先の大和垣の上をかすめるような時候になってしまった。私は、その夏ほど、重くるしい暑さに訶まれたことはなかった。来る年々の夏は、なるほど暑いものではあったが、しかし紺碧の大穹と、純白な雲の峰と、身軽な生活とから、私の好きな気候であった筈なのだが――。

春日のところへも、ネネから、一向音沙汰がないらしかった。それは、若し彼をよろこばすような便りでも来れば、あの男には、とても私に話し誇らずにはいられないであろうことからも、容易に想像出来た。