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こいのいっぱいうり

恋の一杯売

吉行 エイスケ

「文芸公論」昭和2年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,183 字 · 15 页

青空文庫

けれど感覚の最期がいたましい。カバレット・ポンペアの低い嬉びに、世界各国の鶏の歌奏でるユダの主人、私はシャンパン、緑色の天井、進撃勇ましい、桃色の月、見上げて、十人のコウカサスの女に接吻する。

シャンパンおごる私は得意だ。なんと云っても現代は資本主義肯定する。加護のために、私未来のプロレタリア否定する。

ジャズ・バンド、マルセル・シュオブに似たセロ弾き、グロテスクな洋服師思い出すボンベイの過去、いまではロシアで苦心惨憺アンナ・ニコロを祝福して、私は最期迄知ってしまう。

瞬間の嬉びが永遠に悲しみとなってしまう、チャイコフスキーの狂気音楽がかくまで近代を支配する。ワルツ、タレルキンの心臓、ニコロの青蛇のような首抱いて、私は踊る。いまや狂気の沙汰、音楽師、ピアノの波が尼僧呼びよせる。アフリカの砂漠を進出するモスクワの夜の娘、驚歎した私踊りながら黒い両足が、ニコロの太腿を包囲して、混乱した男女の頭脳に、メゾ・ソプラノの鼻歌が巻きついてくる、私ニコロの前に日本紙幣束にして棄ててしまった。

思えば流行歌。アンナ・ニコロが私を引ずって矢鱈に接吻する。愛の聖歌奏でて旋転する夢路たどっているようだ。