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れんあいきょくせん
恋愛曲線
小酒井 不木
「新青年」1926(大正15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,514 字 · 26 页
実際、僕は、真実の恋を雪江さん以外の人には感じ得ないのだ。して見れば、到底恋愛曲線は得られない訳だ。と思っても、やはり一旦強迫観念となったものは容易に去らない。で、致し方がないから、失恋を転じて恋愛となすべき方法はないものかと、僕は頻りに考をめぐらしたよ。そうして、考えて、考えて、僕は一時発狂するかと思うほど考えたのである。
ところが、はからずも、先日、ある人から、君と雪江さんとが、愈よ結婚するという通知を受取ったのである。すると、恰も焼け杭に火のついたように、失恋の悲しみは、僕の体内で猛然として燃え出した。いわば、僕は失恋の絶頂に達したのである。と、その時、僕はこの絶頂に達した失恋をそのまま応用して、恋愛曲線を書くことが出来るという信念を得たのである。
君は数学で、マイナスとマイナスとを乗ずるとプラスになるということを習ったであろう。僕はこの原理を応用して、失恋を恋愛に変えようと思ったのだ。即ち、失恋の絶頂に達した僕の血液を、失恋の絶頂に達した女の心臓に通過せしめたならば、その時に描いた曲線こそは、恋愛の極致をあらわすものだと僕は考えたのだ。こういうと君は、失恋の絶頂に達した女を何処から連れて来るかと訊ねるであろう。