轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おそろしきさくご

恐ろしき錯誤

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,075 字 · 46 页

青空文庫

始めの間はボンヤリしたあるかなきかの疑だったものが、徐々に、ほんとうに徐々に、事実らしくなって行った。そして、今ではそれが『らしく』などという言葉を許さぬ、火の様に明かな事実となって了った。今までは心の中の問題だったものが、余りに明瞭な証拠物の発見によって、もうどうにも動きのとれぬ事実となって了った。どっちみち、僕はこの苦しみを味わねばならぬのだ。どうせ苦しむのなら、多分僕よりも幾層倍打撃を蒙るであろう讐にも、この事実を知らせてやろう。そして、そののたうち廻る有様を眺めてやろう。僕はそう決心したのだ。

その当座、僕は毎日毎日その男の此上もなく巧妙な復讐のことより外は考えなかった。或は憤ったり、或は感心したりしながら、そればかりで頭の中が一杯になっていた。ところが、ある日、地平線の遙か彼方にぽっつりと浮んだ、一点の怪しげな黒雲の様に、ふと妙な考が浮んだ、成程、あの男は完全無欠な手際で復讐を為しとげた。併し、若し妙子が彼の信じている様に、彼を嫌っていなかったとしたらどうだ。いや、却って彼を愛していたとしたらどうだ。……そんな事がある筈はない。それは取り止めもない妄想だ。