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きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

「では不幸な男の手紙を開いてもよい時刻となったのだ」

そういって彼は、机のひき出しから、白い四角な封筒をとりだし、封を破った。そして中から四つ折の書簡箋を取出すと、開いてみた。そこには淡い小豆色のインキで、

「赤星ジュリア!」

という文字が浮きだしていた。

「それは誰が書いたのですか」大江山課長は不思議に思って尋ねた。

「これは青竜王が預けていった答案なのだ。君の答案とピッタリ合った。儂は君にも青竜王にも敬意を表する者だ!」

といって検事は、大江山課長の手を強く握った。

「それで青竜王はどうしたんです」

と大江山が不審がるので、雁金検事は一伍一什を手短かに物語り、九時までに彼の電話が懸って来る筈だったのだと説明した。

「では青竜王は、吸血鬼の犠牲になったのかも知れないじゃないですか。それなら躊躇している場合ではありません。直ちに私たちに踏みこませて下さい」

「うん。……それでは儂も一緒に出かけよう」

そういって雁金検事は椅子から立ち上った。

検察官は重大な決心を固めて、奮い立った。――そして丸ノ内の竜宮劇場へ――。

一行の自動車が日比谷の角を曲ると、竜宮劇場はもう直ぐ目の前に見えた。