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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
一日中であたくしはそのときがいちばん楽しいの。……で、ドライヴしていたんですわ、ホラごらん遊ばせ、ここから見えるでしょう、あたくしの自動車が……」
なるほどジュリアの指す方に、一台の自動車が、小径を出たところに停っていて、座席には彼女の連れらしい、ずっと年の若い少女が乗っていた。それはジュリアの妹分にあたる矢走千鳥という踊り子であったけれど。
「貴女は自動車でここを通りかかったというのですか。よくこれが分りましたネ。……」
と弟の死骸を指した。
「ええ、それは誰かが叫んでいたからですわ。なにごとか大事件が起ったような叫び声でしたわ。だもんで、自動車を停めて、ここまで来てみると、この有様なんですのよ。貴方、たいへんだわ。この学生さん、死んでいましてよ」
「そうです。死んでいるというよりも、殺されているといった方がいいのです。これは僕の本当の弟なのです」
「ええ、なんですって。貴方がこの方の兄さんだと仰有るのですか」
「そのとおりです。僕は四郎の兄の一郎なんです」
「アラマアあたくし、どうしましょう」とジュリアは美しい眉を曇らせたが「とんだお気の毒なことになりましたわネ」