轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页

青空文庫

青年は小径の別れ道のところに立ち停ると吐きだすように呟いた。そして帽子をとり、額の汗を白いハンカチーフで拭った。青年の白皙な、女にしたいほど目鼻だちの整った顔が現れたが、その眉宇の間には、隠しきれない大きな心配ごとのあるのが物語られていた。――彼はさっきから、懸命になって、何ものかを探し求めて歩いていたらしい。

「どうして、こんなに胸騒ぎがするのだろう」

青年は心の落付きをとりかえすためであろうか、ポケットから一本の紙巻煙草をとりだすと口に銜えた。マッチの火がシューッと鳴って、青年の頤のあたりを黄色く照らした。夕闇の色がだんだん濃くなってきたのだった。

いま青年の立っているところは、有名な鶴の噴水のある池のところから、洋風の花壇の裏に抜けてゆく途中にある深い繁みであった。小径の両側には、人間の背よりも高い笹藪がつづいていて、ところどころに小さな丘があり、そこには八手や五月躑躅が密生していて、隠れん坊にはこの上ない場所だったけれど、まるで谷間に下りたような気持のするところだった。――青年は何ともしれぬ恐怖に襲われ、ブルブルッと身を慄わせた。気がつくと、銜えていた紙巻煙草の火が、いつの間にか消えていた。