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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
つまりどっちも吸血鬼がやったんですよ」
「うむ」と青竜王はちょっと眼を輝やかせたが、すぐ元の温和しい彼に帰った。「そうだ、その日比谷公園の話を詳しく君にして貰おうかな」
そこで勇少年は、前日黄昏の日比谷公園でみた惨劇について知っていることをすべて語った。青龍王は曲ったパイプで刻み煙草をうまそうに吸いながらじっとそれに耳を傾けていた。
「すると勇君の説によると、はじめ五月躑躅の陰で恋人の少女と楽しく語っていた。その話半ばに、少女は何か用事ができて、学生を残したまま出ていった。吸血鬼は学生が独りになったところを見澄まして、背後から咽喉を絞め、つづいて咽喉笛をザクリとやって血を吸ったというのだネ」
「その通りですよ、青竜王」
「それから、その恋人の少女は現場へ帰って来たかネ」
「いいえ」勇少年は頭を振って「僕はそれを考えて、長いこと待っていたんだけれど、とうとう帰って来なかったんです」
「それは可笑しいネ。今の話なら、必ず帰って来る筈だと思うがネ。外に恋人らしい女は誰も通らなかったのかい」
「ええ、そうですよ」と勇は応えたが、そのとき急に気がついた様子で「アッ、そういえば赤星ジュリアが近よってきたことは来たんです。