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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
「富士」1934(昭和9)年8月号~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,713 字 · 122 页
「あら、あたしは課長さんにぜひお願いしたいわ。でも一郎さんは、あたしがお嫌いなのよ。どうせあたしは独りぽっちで、地獄へ墜ちてゆくのだわ――」
とジュリアはヒステリックに云って、ハンカチーフを鼻に当てた。彼女の打数はいよいよ荒れていった。
そんな風にして、コースを一巡した結果は、大江山がズバ抜けて成績がよく、ずっと落ちて普通の成績を示したのが蝋山教授と矢走千鳥で、雁金検事も西一郎も更に振わず、ジュリアに至っては荒れ切った悪成績だった。
「イヤ恐ろしい成績表だ。全く恐ろしい」
と雁金検事は首を振って一郎の顔をみた。
「全く、こんなに恐ろしく打てようとは、当人の方で面喰っているところですよ」
と大江山課長は自分のことが問題にされているんだと早合点して、極り悪る気にいった。
「時間があれば、もっと廻りたいのだが……」
と検事が云ったが、凄い当りをみせた大江山も至極同感だった。しかしジュリア達の出演時刻のこともあるので、時間が足りないから止めにした。その代り検事と課長は練習場で、球を戞ッ飛ばしに出ていった。ジュリアと千鳥とは、その間にクラブ館の奥にある噴泉浴へ出かけた。