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きょうぞうのちち

恭三の父

加能 作次郎

在线阅读加能 作次郎《恭三の父(きょうぞうのちち)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,742 字 · 20 页

青空文庫

分らいでも皆な読うで貰うと安心するというもんじゃわい。」と少し調子を変えて、「お前の所から来る手紙は、金を送って呉れって言うより外ね何もないのやれど、それでも一々浅七に初めから読ますのじゃ。それを聞いて己でも、お母さんでも心持よく思うのじゃ。」

「そりゃ私の手紙は言文一致で、其儘誰が聞いても分る様に……」と皆まで言わぬ中に、

「もう宜い※(感嘆符二つ、1-8-75)」と父親は鋭く言い放った。そして其後何とも言わなかった。

恭三は何とも言われぬ妙な気持になって尚お暫くたって居たが、やがて黙って自分の部屋へ行った。

祭見物

「お父さんな、まだ帰らんのか。」と浅七は外から這入って来た。家の中は暗かった。囲炉裏の中には蚊遣の青葉松が燻って居た。

「まだや。」と母親は漬物を刻みながら無頓着に答えた。

「何ちゅう遅いな、皆もう帰ったのに。」

「もう間がないだろうよ。」と恭三は燃えかゝる松葉を火箸で押えながら言った。煙は部屋中になって居る。洋灯の光は薄暗く其煙の中に見える。

「どうやら分らんちゃ。屹度七海の連中に引張られて飲んどるのじゃろう。」と母は言った。

「今年ゃ七海に神輿を買うて、富来祭に出初めやさかい、大方家のお父様ねも飲ましとるに違いないねえ。