轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おもいで
想い出
佐藤 垢石
「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,792 字 · 8 页
けれど、試みに老人が河原に倒して置いた竿を握ってみた。長さは三間あまり、全体の重量が手にこたえるほどの調子で先穂の硬い、二、三十年も使い古したと思われるような、男竹の延べ竿であった。
『竿に、手をかけちゃいけない!』
老人は、咽から絞り出すような声で私を叱った。そして、ひったくるように私の手から竿を取ったのである。何と憎々しい爺だろう。
私は、黙ってその場を立って、自分の竿のあるところへ行き、道具をかたして堤防の上へ登った。広々として、果てしのない酒匂の河原を望んだ。足柄村の点々とした家を隔てて、久野の山から道了山の方へ、緑の林が続いている。金時山の肩から片側出した富士の頂は、残雪がまだ厚いのであろう、冴えたように白い。遠く眺める明星ヶ岳や、双子山の山肌を包む草むらは、まだ若葉へもえたったばかりであるかも知れない。やわらかい浅緑が、真昼の陽に輝いている。
酒匂の川尻の、砂浜にくだける白い波涛は、快い響きを立てている。東から吹く初夏の風を帆にふくらませて、沖合はるか西の灘へ辷って行く船は、真鶴港の石船であろうか。
翌日は、午後から小田原在足柄村多胡の釣り道具屋へ行った。