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ゆかいなきょうしつ

愉快な教室

佐藤 春夫

「マドモアゼル 第一巻第五号」小学館、1960(昭和35)年5月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 10,276 字 · 21 页

青空文庫

「でも愚弟さんとは見えないわ。背たけだってずっと大きいし、第一顔立ちが違っていたもの」

「あたりまえよ。男の子だもの、あれでもフットボールの選手だもの。ボーイフレンドなら、もっとらしい気の利いたのを択びますよ」

とE子は早口で一息に言ってのけると、みんなを一わたり見渡し、口調を改めて言いはじめた――

「そんなことを言う人は誰だか知らないけれど、きっとボーイフレンドをほしい人なのでしょう。羨しがらないで正直におっしゃい。ボーイフレンドがほしいのなら、逗子へいらっしゃい。不良でわたしを追っかけまわすのが二人いるから、いつでも紹介してあげるわ。ボーイフレンドなどあたしに用はない。野良犬の方がずっといいわ」

とE子はいかにもE子らしいことを言う。周囲から拍手が起った。M子もボーイフレンドよりはE子の方が好もしいような気がして拍手した。拍手のなかから誰やらが、

「ほんとうにボーイフレンドがあるくらいなら、E子も犬とキスしたり、お尻をつき出したりなどはしなくなるわね」

と言ったそのとたん拍手は笑声に変った。そのはなやかな笑い声の合唱に合わせるかのように、三匹のチョビが一度に吠え立てはじめた。