轻松读懂日语经典作品
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あいのために
愛の為めに
甲賀 三郎
「探偵文藝 第2巻第4号」奎運社、1926(大正15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,919 字 · 24 页
何階だかも分らなかった。赤ン坊を揺り動かしながら昇ったり降りたりして探し廻った。終いには腹立しさと情けなさとで涙がにじみ出た。美麗に着飾った夫人や令嬢が怪訝な顔で私を見送った。
何べん目かで一番下へ降りた時に、私はふと入口の所に後向きに立っている一人の紳士に眼がついた。横顔を見ると驚いた。父なんだ。足かけ三年遭わない内に、気のせいだかいくらか窶れたようだが、いかつい肩、利かん気の太い眉、骨の高い頬の皺まで、三年前そのままだ。父はじっと入口の方を睨んでいた。でもいつこっちを振り向くか分らない。私は大急ぎで出口の方に向った。そうして夢中で下足をとって外へ出た。もう大通りの方へ出る勇気はなかった。私は大通りと反対の方へ歩んだ。堀端へ出ると、銀行の前から橋の方へブラブラ歩き出した。
幸な事には赤ン坊は時々渋面は作ったが、まだ泣き出しはしなかった。だが、私はどうしたら好いんだろう。父がいる間は呉服店へ行く事は出来ない。呉服店の男衆に訳を話して預けようかと思ったが、容易には預ってくれまい。何しろ赤ン坊なんだから。角の交番へ行けば無論その女が来るまで待てと云うだろう。