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あいよあい
愛よ、愛
岡本 かの子
岡本かの子『愛よ、愛』。同一底本的分册已合并为一书。收入:愛よ愛、現代若き女性気質集、女性の不平とよろこび、時代色、異性に対する感覚を洗練せよ、女性崇拝、山茶花、桃のある風景、病房にたわむ花、異国食餌抄、巴里の秋、売春婦リゼット、巴里のむす子へ、新時代女性問答、家庭愛増進術、良人教育十四種、岡本一平論、かの女の朝。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,138 字 · 99 页
逸作が暫く取り合わないので、かの女も自然自分自身の思考に這入って行った。
暫くしてかの女が、空に浮く白雲の一群に眼をあげた時に、かの女は涙ぐんで居た。かの女は逸作と息子との領土を持ち乍らやっぱりまだ不平があった。世の中にもかの女自身にも。かの女はかの女の強情をも、傲慢をも、潔癖をも持て剰して居た。そのくせ、かの女は、かの女の強情やそれらを助長さすのは、世の中なのだとさえ思って居る。
人懐かしがりのかの女を無条件に嬉ばせ、その尊厳か、怜悧か、豪華か、素朴か、誠実か、何でも宜い素晴らしくそしてしみじみと本質的なものに屈伏させられるような領土をかの女は世の中の方にもまだ欲しい。かの女はそういうものが稀にはかの女の遠方に在るのを感じる。然し遠いものは遠いものとして遥かに尊敬の念を送って居たい。わざわざ出かけて行って其処にふみ入ったり、附きまつわったりするのは悪どくて嫌だ。かの女はそんな空想や逡巡の中に閉じこもって居る為に、かの女に近い外界からだんだんだん遠ざかってしまった。かの女は閑寂な山中のような生活を都会のなかに送って居るのだ。それが、今のところかの女に適していると承知して居る。