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らんだのかるた

懶惰の歌留多

太宰 治

「文芸」1939(昭和14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,369 字 · 25 页

青空文庫

好きなのであろう。もっともらしい顔して読んでいって、突然、げらげら笑い出した。この男の笑い声には、特色が在る。馬の笑いに似ている。私は、呆れたのである。その作家自身ともおぼしき主人公が、ふんべつ顔して風呂敷持って、湖畔の別荘から、まちへ夕食のおかずを買いに出かけるところが書かれていたのであるが、いかにもその主人公のさまが、いそいそしていて、私には情なく、笑ってしまった。いい年をして、立派な男が、女房に言いつけられて、風呂敷持って、いそいそ町へ、ねぎ買いに出かけるとは、これは、あまりにひどすぎる。怠け者にちがいない。こんな生活は、いかん。なんにもしないで、うろうろして、女房も見かねて、夕食の買い物をたのむ。よくあることだ。たのまれて、うん、ねぎを五銭だね、と首肯し、ばかなやつ、帯をしめ直して、何か自分がいささかでも役に立つことがうれしく、いそいそ、風呂敷もって、買い物に出かける。情ない、情ない。眉ふとく、鬚の剃り跡青き立派な男じゃないか。私は、多少狼狽して、その本を閉じ、そっと本棚へ返して、それからまた、なんということもない。頬杖ついて、うっそりしている。