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わがじんせいかん

我が人生観

坂口 安吾

05 (五)国宝焼亡結構論

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,599 字 · 19 页

青空文庫

しかし、あのころはヤブレカブレで万事につけて表裏一体をなしたものはないのだから、ハ、こんな映画を企画しております、と威勢よく言った方が上司の受けもよくて、ハ、あの辺はもう撮影ができませんから企画をひッこめました、などというと社長はこの敗戦主義者めと軍人にブンなぐられたのかも知れない。表面と裏面と、理想と現実と、全然仕事のツジツマが合いやしないが、命じる方も平気な顔、こっちも平気な顔、一切合財、日本中のあらゆる物がツジツマが合ってやしなかったのだ。

とにかく戦争中は、酒をのむこともできないし、見物する見世物といってはないし、まことにヒマであるから、人生の愉しみは読書である。敗戦が目に見えていて、実にどうも全く目的というものの立てがたい毎日に、黄河という課題を与えられたのはモッケの幸いであるから、さッそくシナ研究所というようなところを訪ねて、学者たちから黄河について教えてもらう。しかし、黄河そのものは日本のシナ学者の研究対象ではないらしく、

「おききしたいのは、こッちですが、今の黄河はどこへそそいでいるんですか」

と質問をうけた。ハッキリした発表がないから、黄河がそのときどこへそそいでいるか、シナ学者でも知らない筈であった。