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わがじんせいかん
我が人生観
07 (七)芥川賞殺人犯人
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,326 字 · 17 页
私も探偵小説というものを書いて、ずいぶん自分に都合のよい兇器や殺し方を発明したが、ネバア・ハップンの小説が兇器になるとは思わなかった。探偵小説の読者は、この兇器では、とても納得してくれそうもない。
「トマサンの一生」はピンからキリまで、痛快に自分勝手で故障だらけ、かほど痛快に目のとどかない小説というのは珍しい。
しかし、元来、傑作というものは、目がとどかない作品なのである。かゆいところへみんな手がとどくというのは、実生活には大そう便利であろうが、芸術の傑作にはならない。人間は、男女いずれを問わず、惚れると目がとどかなくなる。そして人間の一生のうちで、最も香気の度が高いのは、そういうバカな状態の時なのである。そして芸術というものは、人間が落付きはらって、かゆいところへマンベンなく手がとどくような快適な実生活に実用品として役立つものではなく、目のとどかない不具の半面に夢や慰めを与えてくれる魔術のオモチャにすぎないものだ。
近松やシェクスピア作品など、実にどうも、悲しく目のとどかない作品だ。人を殺す必要もなく、死ぬ必要もない。ナニ、惚れる必要もありはせぬ。