轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わがじんせいかん

我が人生観

坂口 安吾

01 (一)生れなかった子供

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,735 字 · 22 页

青空文庫

このとき来てくれたのが、南雲さんであった。もっと近いところに二三医者がいたが、ヤブ医者のくせに、未明の往診に応じてくれなかった。この時が南雲さんとの交渉のハジマリだが、私のためにも、女房のためにも、幸運であったと云えよう。そして、南雲さん以外の医者は、たぶん女房を殺したであろう。なぜなら、手術に一時を争う状態であるのに、この界隈では、南雲さんのほかに手術室をもつ医者がなかったからである。

女房は腹膜を併発して一月余り入院し、退院後も歩行が不自由なので、母のもとへ帰すわけにいかず、私の家へひきとって、書斎の隣室にねかせて、南雲さんの往診をうけた。やがて、人力車で南雲さんへ通うことができるようになったが、部屋の中で靴をはいて纏足の女のような足どりで、壁づたいに一周したり、夜更けに靴をだきしめて眠っているのを見ると、小さな願いの哀れさに打たれもしたが、それに負けてはいけないのだ、という声もききつづけた。

しかし、こういう偶然を機会に、女房はズルズルと私の家に住みつくことゝなったのである。

私は、しかし、不満ではなかったと言えよう。彼女の魂は比類なく寛大で、何ものに対しても、悪意が希薄であった。