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〈わがあいするしじんのでんき〉(ほい)
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
室生 犀星
「婦人公論 第四十三巻第五号」1958(昭和33)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,167 字 · 22 页
そんな時に佐藤の全集のことを考えると面目丸潰れの自分を見るような気がして、多くの日はあんたんたるものだった。
当時、小石川に櫻井書店という文学書の出版書店があって、私の随筆集を出してくれていた。店主櫻井均に佐藤惣之助の選集出版の懇請の手紙を書き、私はその返事に意外に快よく承知したという好意をうけとり、嬉しかった。早速、周子夫人と櫻井均と三人で相談をして、三巻続刊することになり、故友の信頼をやっと果すことが出来たのである。昭和十八年(佐藤死去の翌年)の三月に詩集上、下二巻を発行し、随筆集一巻を加え、私は装幀を自分で作り私の拙い字を書いて、世に公けにすることが出来たが、櫻井書店が快諾してくれなかったら、恐らく佐藤惣之助全集(選集)三巻はついに今日に至っても、出版されていなかったかも知れぬ。酔って君に委せると当にもならぬ私を心の当にしていた佐藤の放言が、死というちからを私に加えて迫っていたのかも知れぬ。大抵の場合役に立たない私は、惣之助の場合だけは当になった訳だった。佐藤は墓下にからからと笑って曰く、いや持つべきものは友達だよ、と言い、何処まで好人物だか判らぬ男である。