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〈わがあいするしじんのでんき〉(ほい)
〈我が愛する詩人の伝記〉(補遺)
室生 犀星
「婦人公論 第四十三巻第五号」1958(昭和33)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,167 字 · 22 页
、底抜けに歓喜して手を拍いて言った。呉れるか、ほんとに呉れるか、ほんとに進呈するんだ、おれはやはり中折帽子ががらにあいそうだと私は言った。そうか呉れるか、ただで呉れるのか、それから決めなきゃ後で困ることになる、そうか、ただかあ、済まんなあ、釣をしに舟で帽子がよく吹っ飛ばされて困るが、このトルコ帽なら、潮風だってすぼっと冠っていりゃ大丈夫だ、とうとう、呉れたなあ、おれはずっと欲しかったが、そうそう呉れって言われないからなあ、いや今夜の勘定はみなおれが持とう、彼はそういうと次ぎの酒場に行くまでに、もう得々として毛皮の帽子を頭にのせていた。私は頭でっかちの佐藤の古中折を臨時に頭に乗っけて、ともすれば眉のあたりにずり落ちてくるのを手で抑え悲しげに佐藤に言った。君の頭は何てでっかい頭だあ、ナマズみたいな頭だなあ。
佐藤は私の家に来ると先ず庭を一巡し、京都から持ってかえった子供の墓碑の五輪塔を見て、これはあわれに愛すべき五輪塔だなあ、おれは子供はないが子供を亡くしたむかしの人は、こんな供養塔をつくって永年眺めていたんだなあ、可愛想に赤ん坊の背丈くらいしか、せいも、ないじゃないかと、佐藤は一尺五寸くらいの五輪塔をつくづく、眺め入った。