轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
「太陽」1921(大正10)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页
始めは、勿論ゆき子も同道するつもりでいた。結婚後、二年と経たない彼女は、未だ一度しか良人の故郷を見たことがない。のみならず仏教が非常に熾(さかん)なその地方の生活は、一種独特な興味で、ゆき子の心も牽(ひ)いていた。
東北の或る地方に生父の故郷を持つ関係から、今まで、田舎といえば曠野の中に散在する開墾地ばかりを見て来た彼女にとって、古風な細道や白壁を持ち、村役場の訓示まで、
「時間を励行すべし、仏智に適う」
などという風に書かれる城下村の日常は、全く、珍しかったのである。
また、風景の点からいっても、決して悪い場所ではない。白山山脈の鬱蒼とした起伏や、夕方日が沈むと、五位鷺の鳴く群青色の山峡から夢のように白霧が立ち昇って来る景色などは、日本風な優婉さで、特別彼女の心に強い印象を遺していた。
まして、この度の帰省には、一つの楽しい空想が加っていた。
長年、都会と田舎とに別れ別れの生活をし、親しく老父を慰むる機会を持たなかった真木は、時候のよい今度、父を誘って、何処か閑静な温泉にでも行って、ゆっくり昔語りでもしたいと云っていたのである。
三月が終に近づき、旅行が迫ると、ゆき子は物珍らしい亢奮を覚えた。