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われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
「太陽」1921(大正10)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页
ゆき子は、心が燃え上るのを感じた。
「おかあさまは、御自分で選んで下さった人のことを、若しこういう場合になったら、そういうふうにおっしゃること?」
寿賀子は、全く、この言葉に打れたように見えた。
「真木さんのことになると、お前は気違いだよ。どうせ……どうせ」急に声が力なくふるえた。「自分で好きこのんで結婚なんかして、それっきり仕事も出来ないような女なら……どうせ、それだけに生れついているんだから……」
唇の色が変り、涙が流れ出すのを見ると、ゆき子は、堪らない気持になった。
「おかあさま!」
「いいよ、いいよ、放っておいておくれ」
寿賀子は娘の手をよけて横を向きながら袂を顔にあてた。
「どうせ……私が親馬鹿で……わたしが、ばかだったんだろうよ!」
激しい歔欷に見かねてゆき子は母の肩を抱いた。
「ね、おかあさま、聞いて頂戴。おかあさまはね、私が、一生懸命に仕事をする気にもならないで、のんべんだらりと真木にこびり付いているとお思いになるから、そんな風にお思いになるのよ。私だって決して平気じゃあなくってよ。どうにかしてやりたいと思っているんじゃないの」
ゆき子は、涙がせき上るのを感じた。