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われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
「太陽」1921(大正10)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页
「勿論、御飯を今にする、否、後にするという位のことなら云うことはない。また、理論的に、あれはこうあるべきことだ。あり得べからざることだ。という風に押しつめて行っても一致はするだろう。けれどもこのように、気持そのもので楽に何処までも交響して行くようなことが、果して我々にあるだろうか?」現在、自分はその点でつきない不満を感じているのではないだろうか。――
やや暫の沈黙の後、ゆき子は、はっきりとした声で、
「貴方」
と真木を喚(よ)びかけた。彼女の調子のうちには、どうでもよい場合の、当然な暢やかさがなかった。真木は振返った。
「何?……」
「話しましょうよ」
真直に彼を見ている彼女の眼を眺め、真木は、「何だ」と云うように、また紙に向った。
「話したらいいだろう。いくらでも、こうやっていて聞えるから」
「それじゃあ話した気なんかしないじゃあありませんの」
ゆき子は、始めはとろとろと堤に滲み出した河水が、だんだんと不可抗の力で量と速力を増して来るような気持になった。
「――何の用なの?」
「用じゃあないけど……昨日から私達は碌にほんとの話をしないじゃあないの?」
「そう改ってしようたって出来るもんじゃあない。