轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるおんなのしゅき
或る女の手記
豊島 与志雄
「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,447 字 · 37 页
門の扉は昼間はいつも開いたままだった。
私は彼を後ろについて来させながら、家の前まで来ると、つと身を飜して門の中にはいった。それから玄関で靴をぬいで上ろうとすると、彼もやはり門の中へすうっとはいって来たのである。本当にすうっとであった。砂利の上なのに足音もしなかった。私は急に震え上った。そして玄関につっ立って、初めて後ろをふり返ってみた。すぐ眼の前に、玄関の外に、彼はじっと立っている。私は余りのことに前後を忘れた。いきなり義姉さんの所へ駆け込んだ。そして叫び立てた。
「お姉さん、早く、早く……玄関にお坊さんが私を追っかけて来ています。行って下さい。早く行って…上って来るかも知れません。」
義姉さんは私の様子に喫驚して、何も聞き糺さないうちに、玄関へ出て行かれた。私は石のように堅くなってじっと耳を澄した。何にも聞えなかった。やがて義姉さんは一人で戻ってこられた。
「どうしたんですか。誰も来てはいませんよ。」と義姉さんは云われた。
「いいえ来ています。お坊さんが私を追っかけて来ています。」と私はなお云い張った。
女中と婆やも其処へ出て来た。私達は四人で、一緒に玄関へ行ってみた。