轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あるひ
或る日
宮本 百合子
「愛国婦人」1925(大正14)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,119 字 · 21 页
「ふだんはね、其那奇麗ななりをしないでいいのよ。さっぱり働きいい方が好いからね」
千代は、桃色の襟をのぞかせたエプロンの上に両手を重ね、伏目になって云った。
「はい。――でも……あのこれ一枚でございますから」
さほ子は、気の毒らしい顔を伏せて、せっせと鉢の中をかきまぜた。
「――もう一枚一寸したのがございますんですけれど。――国を出ます時、友達にあずけて旅費をかりましたもんでございますから」
暫く沈黙の後、さほ子は傍に見ている千代に云った。
「家ではね。お料理は簡単なのよ。だからどうかすぐ覚えて自分でやれるようにして頂戴。今こしらえるのはね」
彼女は、料理の説明をした。手を動している間じゅう、彼女は調味料の置場所や、味のこのみやその他を話してきかせた。千代は、実に従順にしとやかに一々「はい」と答えた。れんの遽しい今にも何かにつき当りそうなせき込んだはい、はいの連発ではない。艶のある眼で、流眄ともつかず注目ともつかない眼ざしをすらりとさほ子の頬の赤い丸顔に投げ、徐ろに「はい」と応えるのであった。けれども、両手はエプロンの上に、品よく重ねたきり、一向動かそうとはしない。