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あるせんきょふうけい
或る選挙風景
「新潮 第四八巻第七号」1951(昭和26)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,997 字 · 14 页
ボスのボス的なところを、イヤというほど見せつけられ、黙っていると私までボス奴の言いなりになってしまうような不快な思いを味ったのです。自分の一票ぐらい投じたって、勝つ見込みはないにきまっているが、甚だしく趣味に合わない投票を敢て行うことによって、せめてボスの暴力を黙認しなかった自分のヨリドコロを得ようというような心境になった。
仕事が一段落つくと、いつもの夕方の散歩の時間に、投票所へ行きましたよ。投票に敬意を払って、この日はわざわざ靴をはきました。ガランガラン下駄音をたてるのは失礼だと思ったからさ。
ところが、どうです。投票所は靴をぬがなきゃいけないのだ。私はすぐさま廻れ右、家へ帰ろうとしました。戻りかけて、立ちどまり、戻りかけて立ちどまり、三べんぐらいやりました。
白タビの首相がわざと土足で選挙場へ入場した気持は分りますよ。こういう人間の義務というものは、できるだけ簡便な方式ですむようにするものだ。一々クツをぬがなきゃ這入れないようなところを投票所に用いるバカがあるものか。あんまりバカらしいから、私はクツのまま上ろうかと思ったが、白タビの首相の先例があるので、やめたよ。