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あるりょうにんのざんぱい
或良人の惨敗
佐々木 邦
「面白倶楽部」1926(大正15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,067 字 · 15 页
しかし歯牙にかけないという風を示す為めに、泰然としてレシーバーを被ろうとした。
「あなたは誠意がございますからね」
「お前は妙に食ってかゝるんだね?」
「あなたこそ変につっかゝるわ」
と夫人は何処までも挑戦的に出た。
「俺はお前が何故そんなに楯をつくか知っている。兄に金を貸すのが不平なんだろう?」
と鳥居氏も最早ラジオどころでなかった。
「そんなことはありませんわ。あなたのお金をあなたがお上げになるんですもの、お勝手じゃありませんか?」
と女というものは見す/\それでも、決してそれとは言わない。尤も夫人の場合は厄挫な兄の無心が当面の問題でなかった。常からある一般的不平が昨日の書面と今日の電報で刺戟されたのだった。
「それが厭味だよ」
と鳥居氏は忌々しがった。
「あなたは何でも気を廻すのね。男らしくもない」
と夫人は益※(二の字点、1-2-22)強硬だった。
「お前が何と言っても俺は貸す。お前には迷惑をかけないから黙っていなさい」
と鳥居氏は悉皆激してしまった。
「だから私は何とも申しませんよ。思召し通りになすったら宜しゅうございましょう」
「思召し通りにするよ」
「けれども私くらい詰まらないものはありませんね。