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せんそうはぼくをおとなにした

戦争はぼくをおとなにした

小川 未明

「童話」1947(昭和22)年2、3月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,627 字 · 11 页

青空文庫

もうお家はないんだよ。」と、母の声は、小さく、ふるえました。

「そう、だったか。」と、清吉は思った。そしてこのときほど、自分の母をいたましく、感じたことは、なかったのでした。

「義雄ちゃんのおじいさんが、焼けたら、いつでもこいといったよ。ぼくは、なんでもして、これからおかあさんのおてつだいをするから。」と、かれは、胸の中が熱くなって、母を元気づけようとしても、わずかに、これだけしかいえなかったのでした。

しかし、母は、なんとも答えず、いつまでも泣いていました。かれは、これではならぬと知って、

「おとうさんが、帰れば、新しい家をこしらえてくれるよ。」と、つづけていいました。

しばらくすると、母は、泣きやんで、そでで顔をふきながら、

「おまえがあるから、おかあさんは、もう、けっして泣きませんよ。」と、母は、いったのでした。

清吉は、あの日のことを思い出しました。もしそうでなかったら、きょう、おばあさんをみても、なぐさめようとしなかったでしょう。

「ぼくは、もうおとななんだから……。」

かれは、はりきった気持ちで、胸をそらし、両足に力を入れて、電車道を歩いていったのでした。