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せんそうはわたしたちからすべてをうばう

戦争はわたしたちからすべてを奪う

宮本 百合子

「現代女性十二講」ナウカ社、1950(昭和25)年12月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,456 字 · 25 页

青空文庫

第二次世界大戦によって、日本のファシズム権力がわれわれの運命に加えた破壊力は激しくて、日本の女性が自分ひとりとしてはつましくのぞんでいる片隅の幸福さえも、世界歴史の大通りの上で吹きさらされていることが誰にも実感されて来ている。

中国、朝鮮、日本などのように、封建的な社会の風習と、資本主義社会の苛酷な婦人の労働力に対する搾取とが重なりあっているところでは、特に婦人のすべての重荷と悲運が、婦人問題としてだけでは解決されない。日本の社会そのものが、根本から変ってゆかなければ、口さきや文学の上の議論だけでは男の生活も――女の生活も――人民の生活は、どうにもならない。大衆が現実にきょうを生きている経済事情、その劣悪さから湧き立って世間に溢れている犯罪と社会悪。婦人の問題、そしていまの日本のおそろしい青少年の問題。すべてが、現在の社会の矛盾、或いは、ひびわれの間から発生している。いまのままの社会状態では、われわれが平安に生きることのできる日は一日もない。これは、こんにち、占領下の日本に特権というものをもっていない、すべての人が感じている。

資本主義社会の悪として生じているあらゆる問題の正当な解決の見とおしは、資本主義社会そのものの全体の発展――社会主義社会への見とおしなしにあり得ない。