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せんそうろん

戦争論

坂口 安吾

「人間喜劇 第一一号」イヴニングスター社、1948(昭和23)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,716 字 · 22 页

青空文庫

そこには、人間の空想が無限にのべられ、祈られていた。人は空をとびたいと祈った。孫悟空はキント雲にのり、役の小角は雲にのり、自雷也はガマにのり、猿飛佐助は何にも乗らずドロンドロンと空を走った。然し、我々の飛行機は、その夢を実現し、今や音よりも速く空を走っているのである。

エイと睨み、気合いをかけると、相手がバタリと倒れるという。そんなことは、なんですか。エイとヒキガネをひくだけで、相手の胸をぶちぬく。種子ヶ島の昔から、それぐらいの夢は、現実のものとなっていたのだ。

ゴーレムが暴れ廻ってプラーグの街をひっくりかえしたところで、ジュウタン爆撃以上にはやれないだろう。

まず大体に於て、人間の空想も、一九四五年八月六日のバクダン以前までは、科学とトコトンのところまで、行っていた。

我々の祖先の無限の空想力といえども、その魔法、神通力、忍術のすべてをあげて、八月六日のバクダンを夢みてはいないのである。夢みることができなかったのだ。このバクダンに至って、そのエネルギーは、ついに空想をハミダシ、空想の限界を超えてしまったのである。

筑紫なる梅のオトドが雷となって落ちたところで、せいぜい千ポンドバクダンぐらいのことだろう。