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せんゆう
戦友
小川 未明
「新児童文化 第4冊」1942(昭和17)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,699 字 · 8 页
まったく日が暮れかかると、平原は、静けさをとりもどしました。けれど、四辺には、なまぐさい風が吹いて、月の光は、血を浴びたように赤かったのでした。先刻二人の兵士が、腹ばいになって、話をしていた場所から、さらに前方、三百メートルぐらい距たったところで、
「小西、小西……。」
こう闇の中で友の名を呼びながら、戦友を探しているのは、岡田上等兵でした。
そのうち、彼は、足もとに横たわっている屍骸につまずいて危うく倒れかかったが、踏みとどまって、月の光でその顔をのぞくと、打たれたごとく、びっくりして、
「おい、小西じゃないか、やはりやられたのか。」
彼は、ひざまずくと、戦友の屍を膝の上に抱き上げて、
「おまえのいったことは、やはり虫の知らせだったな。とうとうやられたのか。しかしおれも、思うぞんぶん敵を討って、すぐ後からいくぞ。今夜だけさびしいだろうが、一人でここにいてくれ。明日の朝は、かならず迎えにくるから。」
岡田上等兵は、月光の下に立って、戦死した友に向かって、合掌しました。彼は、足もとに茂っている草花を手当たりしだいに手折っては、武装した戦友の体の上にかけていました。