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せんじょう
戦場
夢野 久作
「改造」改造社、1936(昭和11)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,769 字 · 51 页
私は剔出してやったのです」
「何の弾丸だったね。それは……」
「……………………」
「味方の将校のピストルの弾丸じゃなかったかね」
「……………………」
「……ハハハ……もう大抵わかったね。ここに集めて在る負傷兵の種類が……」
「……ハイ……ワ……わかりました」
私は何故となくガタガタ震え出した。
しかしワルデルゼイ軍医大佐は、依然として「研究」を中止しなかった。なおも次から次へと私を引っぱりまわして、殆んど百名に近いかと思われる負傷者の患部を診察しては質問し、質問しては次に移って行ったが、いずれもその最後は、私が答える事の出来ない質問に帰着する種類の負傷ばかりであった。
悽愴極まる屍体の山と石油臭の中に隔離されている約一小隊の生霊に、モウ間もなく与えられるであろう軍律の制裁……或る不可知の運命を考えさせられながら、その不名誉この上もない……寧ろ悲惨事以上の悲惨事とも見るべき超常識的な負傷の傷口を一々、念入りに診察して行く中に、私の背筋の全面が、気温を超越した冷汗にジットリと蔽われた。烈しい恐怖の予想から来る荒い呼吸のために、私の鬚の一本一本が真白い霜に蔽われた。