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てがみ
手紙
久生 十蘭
「小説と読物」1949(昭和24)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,158 字 · 30 页
とききますと、
「それにちがいなかろうじゃないか。しかし、おれはもう貧乏だから、嫁さんを食わせられんよ」
「そんなら濠洲へ行って金を儲けてください。身代ができたら、私がスクレニを連れに帰ってあなたのところへ連れて行きます」
村上さんは首をふって、
「どうせやるなら、大きな商売をやる。おれは羊毛の仲買をやるつもりだが、下手をすれば、一文なしになる。たしかな宛もないのに、お前の妹と約束はできんね。まー、やめにしよう」
「それで結構ですから、やれるだけやってみてください。駄目なときは、それでようございます」
「四郎、お前は二年もおれといっしょに居たが、内地から手紙がきたのを、一度も見たことがなかったろう。それというのは、おれには親も兄弟もないからだ。おれはどこへ行って死んでもかまわんが、お前には母も妹もあるのだから、おれといっしょに冒険をさせるわけにはいかんよ」といいました。
「そんなことはない。私は濠洲やアラフラ海で、なんども死にそくなっています。いま生きているのは、オマケです。母も妹も、私をアテにしていません。あなたが行かれるなら、どこへでも私は行きます」
すると村上さんは私の顔を見て、