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ぎじゅつのてつがく
技術の哲学
戸坂 潤
「技術の哲学」時潮社、1933(昭和8)年12月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,443 字 · 164 页
* 天才が社会的には、即ち人為的には、生産され得ない神秘的な偶然なものだという思想は、可なり広く行なわれている。そして発明乃至発見というものはそうした天才のものだという考えも決して珍しくはない。例えば「発明の才能は偶発物であり偶然の性質を有っている云々」(Ch. Nicolle, Biologie de L'Invention 1932)。――だがそうすれば発明には何等の合理的な規則的な方法もあり得なくなる。処が実際には、吾々は今日まで多くの発明方法の理論を有っているという事実を忘れることは出来ない(この点に就いては J. Picard, Essai sur la Logique de L'Invention dans les Sciences を見よ)。
実際には併し、このような非合理主義的発明観乃至発見説と無関係に、一切の発明や発見は社会的必要に逼られて、必然的に発生して来ている。アメリカは何も、コロンブスの冒険的創意によって発見されたわけではなかったし、ワットが鉄瓶の蓋の上るのを見て蒸気汽罐の原理をフト思い付いたということも、完全な近代神話に外ならぬ*。